日本では法律上「建物」として取り扱うことについて不動産登記法では、不動産登記は土地及び建物についてなされる旨規定していますが、その建物の要件等について、民法86条1項は土地及びその定着物はこれを不動産とすると規定しているのみで、その他に別格の規定を設けていません。
そこで不動産登記実務上では、不動産登記事務取扱手続準則にて、「建物とは、屋根及び周壁を又はこれに類するものを有し、土地に定着した構造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるあるものをいう」と規定したうえで「建物であるかどうか定めがたい構造物については次の例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定しなければならない」として、具体的に「建物として取り扱うもの」と「建物として取り扱わないもの」についての例示規定を定めています。

以上のとおり建物であるためには

 1. 土地に定着した構造物であること(定着性)
 2. 屋根及び周壁又はこれに類するものを有すること(外気分断性)
 3. その目的とする用途に供し得る状態であること(用途性)

の3要件を具備する必要があります。


裁判においては、上記3要件(建物の物理的な要件)以外に「そのものの社会経済的効用が尽きて無用となるまで継続して使用されることがその取引上の性質となっていること」も含まれ、当該構造物が取引の対象となり得るものであること(取引性)が、実務上では近年重要になっています。なぜなら不動産登記制度は、不動産取引の安全と円滑を図るための制度であることから、登記される不動産たり得るには、それ自体が独立して取引の対象、すなわち、私権の目的となることができるものでなければならないことから、取引性を備えていることも建物の要件として挙げられるとする見解があり、実務上もこれが重要な判断要素の一つとなっています。


これらの3要件+1を満たさないものは建物(不動産)として登記できませんので単なる「構造物」や「機械・器具」等になってしまいます。
ゆえに街でよく見かけるプレハブの現場事務所や海辺のリゾート地に設置されたトレーラーハウスの店舗等は建物として登記はできません。


                             奇妙で変わった住居例

日本 縄文時代以前

洞窟

この頃は岩陰や洞窟は住居としてよく利用されていたようです。利用されていた洞窟は少人数しか生活できない小規模のものが大半で、岩陰はさらに生活面積が小さいものが多いようです。


右写真 室谷洞窟   (C)新潟観光ナビ


日本 縄文−弥生期

竪穴式住居


日本では洞窟や岩陰に続いて住居としてしだいに発達してくるのは、いわゆる竪穴住居である。竪穴といっても深いものではなく、地面を数十センチ掘り下げ、床に柱を何本か立ててその上を藁か萱で覆ったものである。
掘り下げた土間中央に囲炉裏がありますが、屋根が藁ぶきなので煙は屋根から外部に逃げていきます。


右写真 板付遺跡
  (C)福岡市観光文化局


チリ 水上建物 

右写真はアンデス山脈の高地に存在するチチカカ湖の浮島上に建てられた建物群です。
浮島が沈下するとその分新しい萱や藁草を上からひくそうです。

右写真 水上建物  (C)鹿島建設

モンゴル PAO(パオ)

モンゴルの大平原を移動しながら生活する遊牧民の住居がPAO(パオ)で設置、撤去、移動ができるような造りになっています。
しかしキャンプのテントのような簡易な造りではなく、断熱、通気等を十分考えられており、近年では太陽光発電パネルや衛星放送アンテナも備えられているのも多いようです。


右写真 モンゴル PAO  wikipediaより

 アメリカ 樹上建物(TreeHouse)

最近では Crossover the fields を生活ライフにしている人たちが増えております。自家用車ではSUV人気が高まっており、そんな彼らが一度は泊ってみたい家の筆頭格がおそらくツリーハウスでしょう。


右写真 アメリカ TreeHouse   (C)Treehouse USA


 パプアニューギニア 樹上建物

こちらは趣味とかナチュラル生活とかではなく「本物」のツリーハウスです。赤道直下の密林は植物の生存競争が激しく高木の樹冠上部は地上40-50メートルにもなるそうです。その樹冠を突き抜けた上部は不快な害虫も少なく快適だそうですが、命綱なしの梯子での上り下りと嵐の日の揺れは激しそうです。


右写真 パプアニューギニア 樹上建物  (C)roundtable

トルコ カッパドキア

右写真はトルコの有名観光地であり世界遺産のカッパドキアです。上記の洞窟と決定的に違うことは洞窟住居は自然地形の洞窟を人間が利用しただけですが、こちらは人間が穴を掘削して作った点です。


右写真 トルコ カッパドキア  (C)TABIZINE

カシミール地方 船上住居

カシミール地方の水辺に浮かぶ船のよう構造物です。
スクリューや舵等の船としての推進装置は備えていませんので、台船のような構造物です。
現地では住居や宿泊施設等に利用されています。



右写真 カシミール地方 船上住居  wikipediaより


イギリス ナローボート

こちらは上記カシミール地方の船上住居と違って、決まった狭い幅(ナロー)のボートでエンジン、スクリュー、舵等の推進装置を備えていて、イギリスに張り巡らされた運河を移動しながら生活している人が多くいます。
内部は普通の家と変わらない装備があり、大半のボートに薪ストーブが備えられています。近年はレジャーや趣味で所有する人も多いようです。


右写真 イギリス ナローボート (C)Travel.jp

 氷のホテル スウェーデン

内部は-5〜-8度に保たれていて、とても寒いホテルですが、毎年3万人以上も訪れる人気のホテルです。
このホテルは春とともに消滅し、ゆえに毎年違ったデザインになるそうでリピーターも飽きさせないホテルです。



右写真 ICEHOTEL Sweden(C)


世界には変わった住居形態が多数存在します。
日本で「建物」という不動産として認定されるには、上記に表記したように最低3つの要件、すなわち


 1. 土地に定着した構造物であること(定着性)
 2. 屋根及び周壁又はこれに類するものを有すること(外気分断性)
 3. その目的とする用途に供し得る状態であること(用途性)

が必要です。
このような変わった住居は上記3つの要件から見た場合に建物(不動産)と認定するのは難しいですね。

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