土地家屋調査士が境界を確認するにあたり、その土地制度と歴史的背景を知らずして境界の確認はできません。
同様に古図面を検証するときにもその時代の測量方法や誤差の大きさ、用いた測量道具や記した単位の規定など、その図面が書かれた時代を正確に知らなければ貴重な古図面の情報を境界確認に生かすこともできません。

ここでは江戸時代から現在に至るまでの代表的な測量方法を下記に表記します。


右図は江戸時代の検地を実施している時の図です。

田畑の四方に相見竹を、その中間地点に梵天竹を立て、水糸を十字に張り、相見竹はその位置から相手方の相見竹を見てその直線から土地の出入りを観察し、出入りの面積が+-0になるように梵天竹と共に位置をそれぞれ微調整します。
最後にその水糸の長さを計測して面積を出します。
この方法は全国の調査士会の会員さんがそれぞれ学校の校庭等を使用して何度も検証してますが、思ったより正確で、遠い先人たちの知恵に驚かれるようです。

その時使われた間竿(今の長い定規のようなもの)はその時代時代で長さが変わり、例えば
■■   関白豊臣秀吉検知条例では   ■■
「6尺3寸竿をもって検地すべし。」
■■ 征夷大将軍徳川家綱検地条例では ■■
「間竿は6尺1分に定む」

と、時代により「間」の規定が変わっていますので、「太閤町割」で区画された旧博多部に残されている古図面の寸法は1間は6尺3寸となることがあります。


上図 検地の図(安藤 博編『徳川幕府県治要略』より)



左写真は平板測量セットと距離を図るテープです

近代において敷地や田畑等の狭い範囲を測量するときに活躍した道具です。
その測量方法は、上図(検地の図)で説明すると、基準点上(この場合、中央の十字木を持っている人付近)に平板測量セット(画盤)を設置し、画盤上に置いた紙の中央に点(虫ピンor描画)を決めてそこから各土地角に設置されている相見竹の方向をアリダートで覗き方向を決めて実際の距離を巻き尺で測って土地の角の位置を紙に書いていくというシンプルなものです。
出来上がった原図から事務所にて各土地の角や斜めの距離を直接原図から定規で読み取って面積や直接測れない距離を求めます。


右写真 (C)山口商店


右写真は現在主流の測量機器です。

距離はレーザー光線で測り、角度や距離等をメモリに記録し、事務所のパソコンにて作図をします。
目標点を自動で検知してモーターで動きます。
写真からも判るようにアンテナが付いていますので、このタイプは自動的に目標を追尾します。
よって測りたいところを専用の反射ミラーで指示しただけで測量機械が自動的に測量し記録します。
これにより測量機側の操作が不要となりワンマンでの測量が可能になります。
距離、角度共に精度よく測れて、特に高低差がある土地の距離(斜距離)は巻き尺で計測していた時代に比べると比較にならないほどの高精度になっています。
また現在では世界測地系(下記参照)と関連付けて測量しておりますので、その測量成果は現地復元性が高く、仮に天災が起こっても精度よく土地の位置を復元できる図面になっています。

右写真 (C)SOKIA






 上のCGは日本が運用している順天頂衛星、右写真はGNSS測量受信機です。
現在では車のカーナビ(船舶や飛行機)等に普通に使用されていますので一般の方はそちらのほうを連想すると思います。
また、ドローンの自立飛行、最新農業用トラクターやブルドーザー等に装備されて、その位置、高さ等を正確に把握し機械を自動操作し人の操作を必要としない機械も活躍しています。
これらは世界共通の同じ3次元座標系(世界測地系)を用いて地球上のどの位置に存在しているのか把握できるようになっています。
当然土地の測量にも使用されていて、従来、作業量が多くて起伏も激しく見通しが利かない場所での測量等も正確かつ安価で短期に出来るようになりました。
現在では、深い山林の境界を決める時に地権者が営林署の職員と共に山に入り、地権者らが合意した境界の上に立ち、携帯しているスマホの地図上に地点登録をして廻り、営林署に帰ってパソコンにデータを取り込み図面を作って「境界図面」としているところもあります。
近い将来、順天頂衛星等の利用等により、精度が飛躍的に上がりますのでこの方法が適用できる範囲(ある程度の測量精度があれば十分とする地域)が広がり、山林から農耕地、果ては中小都市近郊まで簡易で安価な測量図面が利用されると思われます。
またこの方法は近年、大都市周辺以外の地方の土地(特に山林や農村部)の売買価格の大幅な下落に対応する新たな簡易測量方法として日本全国徐々に範囲を広めていくものと思われます。
   



 左上CG (C)JAXA  : 上写真 (TOPCON)